いい服とは (その4)

私は今まで多くのお客様の採寸をしてきました。今回は上着丈について

お話ししたいと思います。基本的に上着丈は、背中心の上部(カラークロ

スの付け根)から背中心の裾までの長さをいいます。流行によって少しは

変化するとは思いますが、今から30年くらい前に私がこの道に入った時は

「総丈(背上部から床下まで)の2分の1」が目安、あるいは「親指の先端

までの長さ」などいろいろ測り方を教わりました。私が今言える事は基本

はヒップラインがかくれる長さだと思っております。スーツ姿を見た時、

横(水平)に通っているラインは上着の裾線だけです。そういう意味でも

この上着丈というのは、非常に重要だと考えております。お客様は100人

が100人とも体型が違います。総丈の2分の1といってもヒップがかくれる

位置は、それぞれ違ってきます。上のほうに位置する人は足が長いといえ

ます。親指の先端といっても手の長い人もいれば短い人もいます。それと

上着丈は後(背中心)で測りますが、この指の位置はじつは横から見たバ

ランスだと思います。お客様はスーツを着用して鏡を見る場合、真正面か

ら先に見ます。実は上着丈とは背の長さだけでなく、前身の長さ(前丈)

も非常に重要になってきます。これはお客様の体型によっても左右され

ます。姿勢のいい人(反身体)は前丈を長めに設定します。それはバスト

で取られる為です。逆に前かがみな人(屈身体)は前丈を短めに設定し

ます。このような補正をするのは、横から見ても上着の裾は水平に保た

れているかということです。これが「見心地のいい服」の条件の一つだ

と私は思っております。

池田商店 東本浩二

 

 

 

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